沿革


顧問の先生方からのメッセージ



英国国際教育研究所は、2019年4月3日、創立30周年を迎えました。本当に多くの方々に支えられての30年。この場をお借りして心よりお礼申し上げます。皆様が築き上げてくれたこの研究所を守り、研究所らしい次の10年に繋がる活動をしていきたいと思っていますので今後ともどうぞ宜しくお願い致します。いつも私たちを支え、励ましてくださっている顧問の先生方から寄せられたお祝いのメッセージをご紹介します。(あいうえお順)

LinkIcon英国国際教育研究所の歩み






 5月1日から日本の元号が「令和」となることが、この4月1日に公式に発表されました。思えば、英国国際教育研究所の30年は、「平成」の30年余りとぴたりと重なっていたわけですね。英国では日本の元号など意識の外にあるものでしょうが、日本に暮らす私にとっては、元号が変わるのは、心を新たにする良いきっかけとなります。
 「令和」という言葉は日本最古の歌集『万葉集』から引いたものとして、安倍総理は、「一人ひとりの日本人が、明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる」ようにとの願いを込めて決定したのだと説明しています。BBCは、漢字それぞれの意味を拾って、「令和」を、“OrderandHarmony”とうまく英訳しています。
 日本という国もいろいろな問題を抱えてはいますが、来年開催される東京オリンピック・パラリンピックの準備が着々と進んでいることに象徴されていますように、何か新しい時代が始まる予感に包まれております。英国国際教育研究所もその歴史に、輝かしい新たなページが刻まれていくものと確信しております。



池下幹彦
姫路獨協大学 名誉教授

 英国国際教育研究所の30周年おめでとうございます。私が研究所を知ったのは、我が家の娘が日本語講師を目指して留学したのがキッカケでした。
 月給も申し分のない著名代理店に勤めていましたが、ある日「お父さん相談があるの」と言ってきました。「エッ結婚?」と早合点したら「日本語を習いにロンドンへ行きたい」、「なんで外国に行ってまで日本語なんだ」。私も放送局で喋ることもやっていたので強く反対でした。でも娘は既に申し込んでいたのです。
 恥ずかしながら、アナウンサーで学問としての日本語を解説できるのは殆ど居ません。
 私も「言葉のお化粧」というテーマで講演もしてきましたが、研究所の図師先生から公開講座を聞かせていただいて目からうろこ、日本語の生き様を知りました。「おはよう」「さようなら」簡単な日本語でも生かすか殺すか、もっともっと図師先生の生きた日本語の講義を拝聴したいと思っています。
 図師先生もお元気でこれからも「うな丼」、いや「うなぎ言葉」など日本語の命を外国人、いや日本人にも広めていってください。

加藤清
元CBCアナウンス部 部長

 この度は、英国国際教育研究所創立30周年おめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。
 30年前と言えば、日本政府が世界各国からの国費留学生の受け入れ10万人計画を実施することになり、当時国立大学10ヶ所で日本語集中予備教育を始めたばかりでした。その数年後に、英国のロンドンで早くも日本語教員養成に携われたことに敬意を評しておりました。
 福岡での説明会には、毎年図師先生が来て下さっており、研究所に卒業生を送っておりました。また、私自身もロンドンの研究所を訪問させて頂き、その後グリニッジの立派なお城の教室も見せて頂き感動したことを覚えております。
 貴研究所のこれからのますますのご発展を心からお祈り致しております。

栗山昌子
元福岡女学院大学・大学院 教授

IIEL創立30周年を祝し、さらなる発展を祈願して

 英国国際教育研究所創立30周年、おめでとうございます。これまでのIIELの様々な取り組みを拝見し、所長の図師照幸先生のご苦労はいかばかりであったかと拝察し、心からの敬意を表したいと存じます。
 図師先生には2001年からご指導頂いておりますが、いつも教育の根本を考えさせられる鋭い問いを突き付けられて参りました。たとえば、小学校への外国語教育導入に関して、日本がアジアの他国より遅れをとっているので早急に始めなくてはいけないという議論が世の中で高まっているとき、図師先生は「日本の子どもの真の幸福に通じないのなら、何のための児童英語教育でしょうか?」と私たちに問いかけられました。
 また、2008年の夏にロンドンで開催された児童英語教育セミナーに私が参加したときには、当時のグルジア(現ジョージア)とロシアの間に紛争が起きており、図師先生はオープニング・スピーチを以下の問いかけで始められました。「他国の領土を侵略しようとしている国のリーダーたち、この人たちは、いわゆる”一流”といわれる大学を出た人たちなのではないですか?そういう教育を受けた人がこのような侵略をするのであるなら、その教育はいったい何のための教育なのでしょう?」
 2009年に、創立20周年を記念するセミナー”Open College in Tokyo”を私の勤務校である東洋学園大学で開いて頂いたときには、図師先生のご友人である女優の竹下景子さんが司馬遼太郎のエッセーを朗読してくださったことが忘れられません。その一節の内容は、「学校とは、勉強をするだけのところではなく、休み時間に廊下で転んだ友達を見て、その子の痛みを想像する、そのような力も養う場所であるのだ」というものでした。
 この想像力、思いやりの心を育むことは、国際理解教育の根本であり、外国語教育はユネスコが示した方針に従って、国際理解教育をもととしてなされるべきであるということは、英語教師としての私の信念であり、まさにIIELの考え方と一致しているところであります。
 AIやグーグルが自分の言いたいことを瞬時に外国語に変換してしまう今の世界において、外国語教育は子どもたちをどのように育てるべきでしょうか?単に英語の語彙や文法を教え込むだけでなく、異文化の人々を理解し受け入れるやさしさ、論理的に思考する力、多様な人々と協働する力、環境問題をはじめ、世界が抱える問題を解決する力を育てるための人間教育でなければ、意味がありません。
 今年の3月に起きたニュージーランドのイスラム教モスクにおけるテロ事件、そして、犠牲者を悼むアーダーン首相のスピーチからは、このような教育の重要性が今まさに問われていることを考えさせられます。
 この拙文を締めくくるにあたり、図師先生から頂いた大好きな言葉をあげさせていただきます。「人は自分が変われると思うから学ぶのです。そして、学んだ先には、自分の人生の豊かさだけでなく、ほかの人々をも幸せにする力を手に入れた自分がいるのです。」私はいつもこの言葉を学生たちに伝えています。そして、英国国際教育研究所がますます発展していくことを切に祈っております。

坂本ひとみ
東洋学園大学 グローバル・コミュニケーション学部 教授



30年を経てますます大きくなる英国国際教育研究所の存在意義

 30年前と言えば私はまだ大学院を出たばかりの頃で、その時生まれた次男は30歳になりましした。改めて言うまでもなくその間には、世界で本当に様々なことが起こりました。その「時の重さ」を振りかえりながら、今思うことは「果たしてこの30年間で世界はより良くなったのだろうか?」ということです。私にはどうしても手放しで「良くなった」とは言えません。
 21世紀に入ったばかりの2001年には9.11があり、続く2003年にはイラク戦争が始まります。2011年の東日本大震災で発生した原発事故で故郷を追われた人達は、今でもまだ避難生活を続けていらっしゃいます。同時期に起こったシリアの内戦で国外に避難した難民の人達の数は400万人にもおよぶと言われています。そして、つい先日の3月15日には、ニュージーランドのクライストチャーチのモスクでは、白人至主義者によって50人もの罪なきイスラム教徒の方々が射殺されました。
 さて、そのような30年という年月の中、英国国際教育研究所の図師先生は、どのような思いで過ごされ、何を訴え続けてこられたのでしょうか。それは図師先生を知る人達はみなよく知っています。その教えや生き方の全てを短い文章の中で語りつくすことはできませんが、あえて、私が図師先生から教えて戴いたことの中から、最も重要だと思ったことを書かせて戴くとすれば、それは「ことばを教えることを生業とする言語教師は、言語教育を単なる『ことばの知識と技術を教えること』だけだと考えてはならない。」ということです。
 ことばを教えるという行為は、極めて社会的で政治的な行為です。だから、言語教師は、自分がことばを教えることで社会にどう貢献できるかを、常に悩み考え続けなければなりません。また、ことばを教えるということは、生き方を教えるということでもあります。だから、言語教師は、常に「人間いかに生くべきか」という大問題を、学習者の人達と共に、常に考え悩み続けなければなりません。そうした言語教師のあるべき姿、姿勢、立ち方、生き方について、この30年の間に、私は図師先生からたくさん教えて戴きました。
 さて、ではこれからの英国国際教育研究所の存在意義はどうなるのか?当然のことながら、この混沌とした危うい世の中だからこそ、その存在意義はますます大きくなり続けるに違いありません。これからも力強く、その哲学と主張を世の中に訴え続けて戴きたいと願っています。私も大変微力ではありますが、もしもやれることが少しでもあれば、ぜひ何かのお役に立ちたいと思っています。図師先生、並びに英国国際教育研究所の教職員の皆様のますますのご活躍を心から願っております

冨田祐一
学習院大学 文学部 教授

創立30周年、誠におめでとうございます。

 キッチンカウンターで卵を立てる癖があります。底面の3凸点がつくる小さな三角形の中におちる垂線をイメージしすっと卵がたつ瞬間、自分がよって立つべきものを確認しているのかもしれません。
 ある日、図師先生は中学の国語の授業で中谷宇吉郎の「立春の卵」を扱われ、授業冒頭で実際に教卓の上で生卵をたてて見せてくださいました。卵を見つめる教室の空気、ナイフの刃の上を走るような真剣勝負のひりひりした緊張感のなかに私たちの国語の授業はいつもありました。論理的な思考とはどういうものか。それを言語化するということの真髄を理解する。それは明確なイメージとなって残り続け、私たちの心をわしづかみにしたまま40年近くたっているのです。言語で思考し表現すること。論理への信頼と可能性と限界を知ること、人間の心性と文学の価値の柔軟さ多様性を理解することが、人の人たる所以としていつも大きな振れ幅で示されていました。この日の授業風景が、途切れることなく私たちの記憶の中に残り生き方を方向付けていくものであったとすれば、あの卵が立った瞬間こそ私たちの濫觴であったといえましょう。
 これからも志あるものの濫觴の場として貴研究所がますますの御発展をとげますことを心からお祈り申し上げます。

灰谷謙二
尾道市立大学 芸術文化学部 教授

英国国際教育研究所は「まなびや」である。

 英国国際教育研究所創立三十周年、誠におめでとうございます。
 『濫觴』へのメッセージを、とご連絡をいただき、すぐに心に浮かんだのは「挑む」という言葉でした。挑むことは、その対象、理由・目的、方法・手段がどのようなものであれ、挑むこと自体に価値がある。私たちは、空を眺め、風を感じ、2019年の水・火・地に養われて、確かにここにいる。生きている。しかし、挑んでいるか。
 挑む。何か大きなもの・ことに出会い、主体的に歩みを進め、全身全霊で取り組み、乗り越え、「新たな世界」に至る。そして、再び、「新たな世界」での想像を超えた出会い。その出会いに驚き、怯み、自分の非力を痛感する。しかし、歯を食いしばって前を向く。覚悟と決意。一歩踏み出す。熱と光を体中から発して、挑戦する。超克。突き抜けていく。「いま」「ここ」「私」が変わっていく。さらに「より新たな世界」での出会い。そして挑む。
 英国国際教育研究所は「まなびや」――出会い、挑み、世界・自分を変えるところ。
 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

若林茂則
中央大学 文学部 教授/日本第二言語習得学会J-SLA 会長

さらなる10年への期待

 変転の激しい時代に国際教育・研究を基盤として志を貫いてきた英国国際教育研究所(IIEL)が30周年を迎えることに、まずは敬意を表したい。
 研究所の歴史を「沿革」によって概観すれば、30年の歴史は、およそ10年ごとに3期に分かれていることに気づかされる。すなわち、創成期(1989~1999年)→拡充期(2000~2010年)→模索期(2011~2019年)の3期である。創成期には、学際的な充実を求めるとともに、「大きな地球賞」を創設し、小中高の「国際人養成セミナー―僕たちの地球」が開催され、みずみずしく活発な活動がうかがえる。拡充期には、それらを整えつつ、「子ども」「未来」「教育」をキーワードとして、果敢に教育・研究に挑み実績を積む姿が見える。模索期は、公的活動が多くを占めるが、拡充期のキーワードはほとんど用いられなくなり、改めて国際教育・研究の根源を問おうと模索している姿が、私には想像される。
 激動の時代の根源に眼差しを向け、問い続ける模索期の今が、おそらくは、次の10年の充実期につながるのであろう。私はそれを夢見、強い期待を寄せたいと思っている。

渡邊春美
京都ノートルダム女子大学 現代人間学部 特任教授/高知大学 名誉教授

 I take great pleasure in congratulating the Institute of International Education in London for all its achievements since its inception 30 years ago. The Institute which was founded by Dr Teruyuki Zushi has been a stalwart institution for research, learning and teaching of Japanese in London. It has always strived to provide the opportunity for its students to maximize their potential for the common good of the community in London. Over the past 30 years, The Institute has admirably committed itself to triangulate teaching, research and community engagement.
 The number of successful students taking courses and graduating at the Institute of International Education in London is a solid testament to its enviable track record. The Institute of International Education in London has continued to attract the top students to its courses and programs including a unique Master’s program in Japanese language learning and teaching. For the past three decades, The Institute has made a unique contribution to the divulgation and promotion of Japanese language and culture in London. I am really proud and honoured to have worked with passionate, motivated and professional teaching staff and administrators at the Institute for the past ten years.
 On this very special occasion, I would like to wish the 30th anniversary celebration of The Institute of International Education in London a fruitful and memorable event. I would also extend my best wishes to the Director of the Institute and all members for continued success in their future endeavours.

Alessandro Benati
Head of English Department, American University of Sharjah, UAE
Professor of English and Applied Linguisti


以下は、英国国際教育研究所の創立20周年記念の際、顧問の先生方からお送り頂きましたメッセージです。

IIEL創設20周年を祝して

 貴研究所がこの度、創設20周年を迎えられたことは慶賀の念に堪えない。
 国際化時代を迎え、国家間の距離は益々縮まり、国際交流が盛んになるにつれ、外国語教育の必要性が高まっている。IIELが日本と英国を繋ぐ橋としての日本語教育や英語教育を中心とする国際教育推進に果たして来られた貢献が高く評価されていることは喜ばしい限りである。
 総合的な言語教育の一環としてここ10年余「児童英語教育セミナー」(STEC)を開催され、多くの児童英語教師を輩出し、内外から注目されている。STECの企画、運営、指導の一端を担わせて頂いたことは大きな誇りであり、喜びである。
 貴研究所の益々のご発展と所長始め、職員の方々のご健勝と一層のご活躍を祈念する。

神奈川大学・大学院 名誉教授
日本児童英語教育学会JASTEC 元会長・現顧問
伊藤克敏

 皆様方の多年にわたるご努力が実を結び、20年という節目の年を迎えられることを心よりお喜び申し上げます。
 私は児童英語教育に従事している者ですが、図師先生とは公開講義などでご一緒させていただきました。また数年前にはロンドンの研究所も訪問させていただいたことがあります。図師先生からは英語教育関係だけでなく、教育全般について幅広く色々なことを教えていただいております。先生が語られる言葉は鋭く、さすが詩人だといつも思わされます。海外から見られる日本の教育についてのご意見は大変貴重なもので、今後もどんどん発信していただきたいと思います。最後に、これからも今まで以上に研究所が発展されることを心より祈念いたします。

千葉大学 教授
テンプル大学大学院日本校 准教授
アレン玉井光江

 英国国際教育研究所創立20周年おめでとうございます。素晴らしい環境で理想的な教育を目指す、図師照幸所長の高邁な理念に基づいて始められた研究所には何度か訪れましたが、その都度、英国の伝統的な恵まれた環境で学べることの価値を実感しています。若い時代に、日本とは全く異なる英国の教育現場で目的を持って学ぶことができるのは、たとえ短い期間でも、かけがえのない特権です。人生の大きな遺産となることだと思います。私はそういう理念に感銘して学生を送り続けてきました。学生の受け入れ、ご指導を感謝しております。
 英国国際教育研究所の今後のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。

福岡女学院大学・大学院 前教授
現大学院研究科 非常勤講師
栗山昌子

 IIEL創立20周年、誠におめでとうございます。研究所をゼロから立ち上げられ、ここまで立派な教育機関に築き上げられた図師照幸先生のご努力とご苦労に、心からの賞賛の拍手をお送りしたいと存じます。
 私が図師先生の講演会に初めて伺ったのは2001年5月でした。児童英語教育に反対の本が出版されて話題となっていましたが、先生はその論拠を全て論破してくださり、私は溜飲の下がる思いが致しました。その夏、イギリスのSTECに参加させていただき、先生のお心の大きさに感じ入り、それ以来、先生のご講演を伺うたびに教育が本来目指すべき方向を教えて頂いております。
 IIELは日本と英国の教育界に重要な一石を投じてきました。これからもますますの発展を続けることでしょう。私も微力ながらお力になりたいと思っている次第でございます。                 

東洋学園大学 教授
坂本ひとみ

 創立20周年、おめでとうございます。
 一口に20年といっても、創立以来今日に至るまでの貴研究所の維持・発展のための皆さんのご努力たるや大変なものと想像しております。特に図師照幸所長のご奮闘に改めて敬意を表します。
 私が初めて研究所を訪問したのは、1995年のことでした。図師先生の学生諸君との親しみあふれる語り合い、学生の皆さんの溌剌とした研究・学習活動、事務職員の方々のてきぱきした対応等々が緑美しいキャンパスで繰り広げられているのを拝見し、強く感動したことを今でも鮮明に思い出すことができます。
 私もその後何度か講演を依頼されお話をする機会がありましたが、とても熱心にお聴き頂きました。
 20周年を迎えた研究所が、30周年に向けてさらに力強く発展していくことを期待いたしております。

立正大学 教授
日本教育政策学会 会長
浪本勝年


問う人による学びの共同体―創立20周年に寄せて

 図師照幸所長(Principal of IIEL)に初めてお会いしたのは、2004年夏の夕方であった。その時、私は、シェークスピア劇に関する授業実践論文の収集のためにロンドンに滞在していた。図師所長は、不案内な私のために、滞在先のThe Grange White Hall Hotelまで迎えに来てくださった。
 その日は、夕食にピカデリーサーカスに近いイタリアレストランに連れていっていただいた。食事をしつつ、私について、研究について、勤める大学のこと、学生のこと、教育のこと、そして、図師所長について、研究所のこと、日本語教育のこと、日本の教育のことと、話は脈絡を求めず、広がって興味深く、深夜まで尽きることがなかった。
 以来、ロンドンに行く度に、あるいは図師所長の来日の度に過密な時間を割いて会って頂いた。勤務大学で2回、講演もお願いした。
 講演は、印象深く、聴き手を深い思考に誘うものであった。中で、図師所長は、見えないものを見ようとすることの大切さを説き、学ぶことの意味を、ともに幸せに生きることに求められた。思うに、見ようとする眼差しの根底には、問う心が要る。教育の本質をとらえるには、薄汚れた夾雑物を剥ぎとる鋭い問を必要とする。見る人は問う人であろう。
 図師照幸所長の言葉は問う人としての言葉である。それはまた、さらなる問を育んでくれる。私が心ひかれるのも、おそらくはそこに理由があるのであろう。
機関としての英国国際教育研究所にも、その活動の根底に問う人の存在がなくてはならない。創立20周年を迎えた英国国際教育研究所が、国際社会の根底に向かって問いを発し、眼差しを深部に向け続ける。とともに、人々の問を育み、眼差しを磨き、ともに響き合って、学びの共同体としてさらに発展していく姿を、私は想い描いている。

高知大学 教授
渡辺春美