(8)みどり・の・くろかみ
日本に出張すると、いろいろな発見がある。街を歩く。かつて様々な色に染められた若い女性の髪の色が落ち着きを取り戻し、黒に戻ったように感じる。とはいえ、「みどり・の・くろかみ」といった風情はない。この言葉を若者の前で使ったら、「みどりという名前の女性の黒髪のことですか」と聞かれた。唖然としていると「なんだか矛盾した感じですね」と追い打ちを食らった。どうやらこの「みどり」という言葉を勘違いしてとらえているようだ。この「みどり」という言葉は、いわゆる「緑色」を意味しているのではない。「瑞々(みずみず)しい」という言葉から転じたものである。「つやのある美しい黒髪」(広辞苑)という意味だ。「みどりご(緑児・嬰児)」という言葉があるが、これは「新芽のように若々しい児の意」(広辞苑)である。ところで、先に「風情」という言葉を用いたが、髪の色だけでなく、若い女性の、その醸し出される雰囲気に、初々しさや瑞々しさが感じられないのが残念なのである。いや、ぼくが歳をとったせいだな、これは。
(2009-04-13)
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